勝負を避ける?申告敬遠の場面が急増中

近年、メジャーリーグ(MLB)での大谷翔平選手の打席ではたびたび「申告敬遠」というシーンを見かけます。つまり、投手がボールを一球も投げずに四球を与える戦略です。特に得点圏にランナーがいる場面や、勝負所で相手チームが大谷選手との直接対決を避けたいと判断した際に、この申告敬遠が選ばれるケースが増えています。
このルールは野球に馴染みのない方にとっては「なぜ投げずに歩かせるの?」と不思議に感じられるかもしれませんが、MLBでは2017年から正式に採用されている制度です。
なぜこのようなルールが導入されたのでしょうか? そして日本のプロ野球や高校野球にも同じようなルールは存在するのでしょうか?
本記事では「申告敬遠」の基本的な仕組みや背景、日本とアメリカの違い、さらには野球ファンの間での評価や今後の議論についてわかりやすく解説していきます。
ボールを投げずに四球を与えるルール
「申告敬遠」とは、投手が実際にボールを4球投げることなく、監督や捕手が審判に申告するだけで打者を故意四球(いわゆる「敬遠」)にできる制度のことを指します。通常、四球を与えるにはストライクゾーンを外すボールを4回投げる必要がありますが、申告敬遠ではその手順を省略できるのです。
この制度がMLBで正式に導入されたのは2017年。それまでは敬遠する際にも形だけは4球を投げなければならず、まれに暴投やミスによる予期せぬ進塁や得点が発生することもありました。また試合のテンポが悪くなるという声も多かったため、試合の効率化と安全性を目的にルールが改正されました。
申告敬遠は監督または捕手が審判に「打者を敬遠する」とジェスチャーやコールで伝えることで成立します。審判がそれを確認すれば、打者は自動的に一塁へ進み、プレーは続行されます。
導入当初は賛否もありましたが、現在ではMLBの中で戦略の一部として定着しつつあります。
MLBでの導入理由と戦術面でのメリデメ

申告敬遠がMLBで導入された背景には、試合時間の短縮と予期せぬアクシデントの防止という2つの大きな目的があります。
従来の敬遠は形式的に4球を投げる必要があり、その間にプレーが進行しないため試合のテンポが落ちるという指摘がありました。また、敬遠球の途中で暴投が起きたり、捕手が取り損ねたりして予期せぬ進塁や失点が発生することもあったのです。こうしたトラブルを防ぎ、よりスムーズな試合運営を実現するために、MLBは申告敬遠の制度を取り入れました。
また戦術的な観点でもメリットがあります。たとえば、大谷翔平選手のような長打力のある打者と無理に勝負するよりも、次の打者と対戦した方が確率的に有利と判断される場面では、申告敬遠によって確実にリスクを回避することができます。こうした戦略的判断はデータ重視のMLBらしい合理的な発想とも言えるでしょう。
一方でデメリットとしては、野球の「駆け引き」の醍醐味が薄れるという声もあります。たとえばバッターが敬遠球を強引に打ちに行くという“裏をかく”プレーや、投手のミスによる波乱が起こりにくくなり、試合展開が予定調和になってしまうという指摘です。
つまり申告敬遠は「効率」と「見せ場」のどちらを重視するかという議論とも深く関わっているルールなのです。
日本のプロ野球や高校野球でも使える?
MLBで導入された申告敬遠は、実は日本のプロ野球(NPB)でも2018年シーズンから正式に採用されています。アメリカに1年遅れての導入となりましたが、理由はMLBと同様、試合時間の短縮や安全性の向上を図るためです。
NPBでも監督または捕手が審判に「申告敬遠」を伝えれば、投手が1球も投げることなく打者に四球が与えられます。ルール上はMLBとほぼ同じであり、作戦として活用される場面も見られるようになってきました。
ただしNPBではMLBほど頻繁に申告敬遠が使われるわけではなく、「勝負を避けること」に対する慎重な空気や、観客への“見せ場”を重視する文化も背景にあるとされています。
一方、高校野球では2020年シーズンから申告敬遠が正式に導入。日本高等学校野球連盟(高野連)は選手の負担軽減や試合時間の短縮を目的として、申告敬遠の導入を決定しました。
高校野球における申告敬遠の運用は、以下のように定められています。
<守備側>
申告は伝令を通じて行う。
連続して行う場合は、最初の通告時にまとめて申し出ることも可能。
カウント途中からでも適用可能で、申告後はその打者への投球数は加算されない。
<攻撃側>
当該打者は一度必ず打者席に入る必要がある。
<審判>
球審はタイムをかけ、打者に一塁を与える。
このように、同じ「野球」という競技でも、リーグやカテゴリによって申告敬遠の扱いには差があるのが現状です。
申告敬遠は卑怯なのか?賛否と今後の課題

申告敬遠は合理的なルール改正として歓迎される一方で、「勝負を避ける姿勢がスポーツマンシップに反するのでは?」といった批判も根強くあります。特に大谷翔平選手のようなスーパースターが見せ場の場面で申告敬遠されると、観客や視聴者からは落胆の声が上がることも少なくありません。
また一部のファンやOBからは「申告敬遠は卑怯ではないか」「スター選手との対決を楽しみにしている観客の期待を裏切る」といった意見が寄せられており、賛否が分かれる制度です。しかしベンチからすればあくまで勝利を優先する上での戦術的な選択であり、責めることはできないという見方もあります。
今後の課題としては「申告敬遠が頻発しすぎると試合の魅力が損なわれるのではないか」という点があります。これについては特定の回数や条件に制限を設けるといった案も議論されていますが、現時点では正式な規制はありません。
申告敬遠は、単なるルール改正にとどまらず、「勝利と見せ場」「効率と心理戦」といった野球の本質的なテーマにもつながる、非常に興味深い制度と言えるでしょう。
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申告敬遠は時に「勝負から逃げた」とも受け取られかねない戦略ですが、現代野球の中では確かな意義と目的を持って導入されたルールです。
大谷翔平選手のような強打者を相手にしたとき、チームとして最善を尽くすための一手であると理解しつつ、観客としてはその駆け引きの妙も楽しみたいところです。
参考情報
NPBからのお知らせ|記録/ルール
https://npb.jp/npb/#ctg05
MLB公式ルール
https://mktg.mlbstatic.com/mlb/official-information/2025-official-baseball-rules.pdf
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